先日横須賀美術館に行ってきました。
山本理顕設計工場の設計によるこの美術館は、後ろ三方を森に囲まれ、北東が海に面しています。東京湾の眺めがすばらしく、「地形を利用して景観と建物とを一体化させたい」というコンセプトから、海側から見た時に背後の森への視線が抜けるよう、また海の塩害対策からも、建物の半分を地下に埋めた低層の構想でできています。敷地の海側は、なだらかな斜面でそのまま海につながるようにし、地上に出ている建物部分は森に隠れるように建っています。また山側から下りてきた人は、地続きで屋上広場へ誘われ、建物の中に自然に足が向くようなアプローチとなっています。観覧券を持っていない人でも気軽に利用できる無料の空間が多くあり、展覧会を目的に来た人も途中で外に出て、展示室に再入場できるようになっています。
本館展示棟は、ガラスの外側と内側は鉄板によるダブルスキン(二重皮膜)で覆われています。エントランスホールや吹抜のギャラリーでは自然光を自由に取り込み、開放感のある空間をかもしだしています。また鉄板の天井や壁に丸穴を開けることで、光の分量や熱、視線をコントロールしています。
「小さな丸穴からは森の深い緑が見えます。晴れた日の夕方、丸穴から見る空の色は驚くほど濃い青色です。大きな丸穴の海を大きな貨物船が通過していきます。雨の日、寒い日、暑い日、長い時間、短い時間、時の変化を楽しむことができる美術館です」―山本理顕氏
また館内のサインは、特徴あるヒト型ピクトグラムが各場所への案内を担っています。 単に場所を示すだけではなく、階段を上る人や本を読む人を表し、温かみも感じられます。
展覧会は「ロイヤルコペンハーゲンと北欧デザインの煌めき」(2023.9.16~11.5)で19世紀末から20世紀の陶磁器、銀器、ガラス器を中心に、北欧のデザインの魅力を紹介しています。
館内には図書室(無料)も併設されていて、日本、西洋、東洋の画集、写真、建築等の本が収められていて興味の有る方にはとても魅力的な図書室になっています。
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