今読んでいる本に江戸時代の教育についての話が載っていたので、ご紹介します。今の時代にも通用する内容です。
人間としての基本をちゃんと知って身に着けておけば、のちのち職業や住む所などに関係なく充実した人生が送れるようになります。その最も大事なのは人格形成です。技能ももちろん必要ですが、人格ができた後に技能に取り組むと非常に早く習得ができます。技能だけ進んでしまうと、人間的な側面がついてこないから、行き詰まったり頓挫してしまいます。現代は技能を重視する社会だから、行き詰ったり頓挫してしまう人がたくさんいますよね。そういう意味では「人格から形成する」という江戸時代の考え方は正しいのです。
では親の子供に対する「教えること」というのは、「こうやりなさいと伝えること」ではなく、「引っ張り出す」ということなのです。それは情緒的な部分と論理的な部分があります。
生まれてから3歳ぐらいまでの間、引っ張り出すのは「慈愛(情緒的部分)」と「義愛(論理的部分)」です。「慈」と「義」は人間の精神の基本です。「慈愛」とはわが子を守りかわいがり、世話をいとまず育て上げる無償の愛です。「義愛」は人間として行うべき道理、つまり「こういうものにはこういう意味があるんだよ」と意味や意義を教える論理です。
その慈愛と義愛を「引っ張りだす」とはどういうことかというと、引っ張り出すには体験させることしかありません。それがどういうものかをうんと体験することで、自分の中にあるそれが引っ張りだされてくるのです。だからうんと注ぎ込む。注ぎ込むとは「意識してやること」です。「意識して」というのが大変重要で、意識しなければ伝わらないのです。そうすることで子供心にも「いいな」と言葉で表現できなくても「この感じいいな」と思うようになってくる、ここが大事なところです。そして子供の中にも慈愛と義愛が引き出されてくるのです。人生の拠りどころ、自分の軸の土台となっていきます。
このように段々子供の心の中に秩序が形成され、慈愛を受けた子供には、困っている人をみるといたたまれない「惻隠(そくいん)の心」が芽生え、義愛を受けた子供には、自分の不善を恥じ、不正や悪を憎む「羞悪(しゅうお)の心」が芽生えてきます。それに加えて譲り合う「辞譲の心」、道理に従って良し悪しを判断する「是非の心」が出てきます。この4つの心を「四端(したん)」と呼び、誰もが持っている道徳感情だと位置づけたのが孟子です。
この後にこの本では実践的なことが書かれています。
その続きは次回にいたします。
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